取扱鋼材

STEEL MATERIALS

ステンレス鋼

S32760

S32760とは、スーパー二相系ステンレス鋼です。 S32760は、非常に高い強度と耐孔食性を兼備し、さらにオーステナイト系ステンレス鋼よりもNi含有量が低いために、高いコストパフォーマンスを示す材料です。 高耐食性二相系ステンレス鋼であるSUS329J4Lの耐孔食性と強度を超える鋼種です。

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用途

海洋施設、化学プラント、海水淡水化プラントetc

代表成分

S32760の属するスーパー二相系ステンレス鋼とは、通常のステンレスよりもさらに耐食性や耐熱性などを高めた高機能ステンレスを指します。 S32760の化学成分範囲をその他の二相系ステンレス鋼と比較して耐孔食性に優れます。S32760の概略化学成分は、25Cr-7Ni-3.6Mo-0.6Cu-0.6W-0.27Nで、耐孔食性の指標となるPRE(耐孔食性指数、PRE=%Cr+3.3%Mo+ 16%N)が40以上となるように設定されています。 ニッケル含有量が高いため、耐応力腐食割れ性にも優れています。​

S32760 成分値

C ≦ 0.03
Si ≦ 1.00
Mn ≦ 1.00
P ≦ 0.04
S ≦ 0.02
Ni 6.0- 8.0
Cr 24.0-26.0
Cu 0.5-1.0
N 0.20-0.30
Mo 3.0-4.0
W 0.5-1.0

機械的性質

S32760は優れた耐海水性を有し、海水中で使用可能です。 冷間加工によりHv500が得られ、また析出硬化熱処理でさらに硬度アップが可能です。透磁率は80%の冷間加工でもμ≦1.01と低位です。耐熱性はSUS310より良好でSUH660に近い特性を有します。 S32760の規格で定められた引張強度、耐力、硬度などの数値は下表の通りとなります。

S32760 機械的性質

耐力 N/mm2 550以上
引張強さ N/mm2 750以上
伸び % 25以上
硬さ(HBW) 270以下

加工性・特性

S32760の特性としては、高温ではSUS304に比較して強度が低いですが、1000℃以下では急激に強度が上昇するので、注意が必要です。熱間加工後は固溶化熱処理が必要です。 冷間加工はSUS304に比較して耐力が高く、伸びが低い点に注意して下さい。 溶接性溶接は標準オーステナイト系ステンレス鋼と同様、TIG、MIGおよび被覆アーク溶接などが可能です。溶接棒はS32760用溶接棒を用いますが、予熱や後熱の必要はありません。脆化の原因となるσ相の析出を防止するために、パス間温度が100℃以下になるようにして下さい。 熱処理固溶化熱処理温度は1025〜1125℃であり、熱処理後は急冷が必要です。冷却はできるだけ早くして脆化温度範囲(475℃脆性温度範囲、σ脆性温度範囲)にさらされる時間を少なくする必要があります。 酸洗酸洗は、硝酸−弗酸の混酸を使用しますが、SUS304と比較して耐食性が高い分だけスケールは若干落ちにくいので、酸洗前に短時間の溶融アルカリ浸漬を行うか、またもし可能ならばショットブラストをかけると非常に有効です。

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